わたしがAirbnbの住み込みホストをしている理由

わたしの家には、世界の旅人たちが暮らしている。住み込みで、Airbnbの代理ホストをやっているのだ。



Airbnbとは、「暮らすように旅したい」という想いを持った旅人に、自宅の一部屋をお手頃価格でお貸しするというもの。現在全世界192カ国、33,000の都市で、80万以上のホストたちが、宿を提供していると言われている。





我が家の場合、庭に盆栽、壁はふすま、床は歩くたびミシミシ鳴り、扉の立て付けは基本悪い、「鎌倉のばあちゃん家」みたいな古民家でやっている。
古い家が持つ独特のノスタルジーは需要があるようで、世界各国、老若男女、一人旅からファミリートリップまで、多種多様なゲストたちがやってくる。


ハイシーズン間近の最近は、ほぼ毎日、全2室とも埋まり、ちょっと忙しい。




ゲストたちからのメール対応、当日部屋の案内やちょっとしたコミュニケーションをとることが、私の役目だ。





毎日出会い、宿り、去っていく。ほのかな春の香りのする優しい風が、家の玄関から台所の窓を吹き抜けていくように、儚い出会いが途切れることなく続いていく。



短い間だからこそ、素敵な滞在になりますように、と、鎌倉のおいしいカフェ、レストラン、面白い穴場スポットなどを教えてあげたりする。
そうすると、ゲストたちも自然とたくさん話をしてくれる。
日本に来た理由、今までの日本の旅がどれほど素晴らしいものだったか、またホームタウンではどんなライフスタイルを送っているのか、仕事は何をしているか……。



異国ならではの彼らの話を聞いていると、私も本当に旅をしているみたいな高揚感を味わうのだ。


そして、その瞬間目に見えない何かを、音を立てずにそっと交換しているような感覚になる。



更に、彼らは次に来るゲストたちや私に、いろんなものを置いていってくれる。(もちろんただの忘れ物もあるのだけど)


日本人はあまり選ばない、ちょっと意外な食べ物。
どこかの国のお茶、見たことのないお菓子。
ホワイトボードに書かれた、読みにくいメッセージ。
お世話になったお礼に、といただくたくキュートなプレゼントたち。


いつか、みかんがテーブルの上に置いてあったときは、センスがあるなと笑ってしまった。




それらのコミュニケーションや贈り物、忘れ物たちには、もしかしたら顔もわからない誰かへの心遣いが宿っている。
わたしには、そこに、「ほんの気持ちです」という一筆箋が添えられているように見えるのだ。



「ほんの気持ち」を、送ってくれる人がちゃんといる、受け取ってくれる人がちゃんといる。
それが無理せず自然に行われる家であれば、永続的によくなっていくだろう、と毎度毎度思う。




今、Airbnbは「シェアリングエコノミー」の一つとして、注目を集めている。


と同時に、悪いうわさがすぐにニュースになる。

運営も個人、使うのも個人だから、心ない誰か一人が起こした迷惑、悪気なく起こってしまった誰か一人のマナー違反でさえ、それ自体の印象を大きく変えてしまう。
運営者、利用者の心がけの有無が、大きな声を持つサービスなのだ。



だからこそ、関わる人一人ひとりが、無理をせずそっと添える「わたしのほんの気持ち」「あなたのほんの気持ち」が、きっとシェアリングエコノミーを本質的に潤わせてくれるのだと思う。




Airbnbがもっともっと活発になっていきますように ー


一旅人として、一ホストとして、
鎌倉の隅っこにある古い古い家で小さな灯りをともしながら、大きく旗を振りたい。





yuico *

(天狼院ライティング・ゼミ 課題記事より 2017.4.17)