ゆいこの、徒然なるままに

~ ひとと自然に寄り添った暮らしを、ゆるりと ~

彼氏とか彼女とかもうどうでもいい人は、ぜひ猫と付き合ってみてください

 

東京に出てきてすぐに、恋をした。相手は、野良猫だった。

ある日、私の住んでいた家の前で、彼が鳴いていた。

その日から、同じ屋根の下、暮らすようになった。

 

 

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彼は、甘え上手だった。

 

とっても甘ったるい声で、「ゆいこさん」と呼んだ。

 

出勤前、座ってメイクをしていると、こたつの中をくぐり抜けて、わたしのお腹に抱きついて眠っていた。

 

少し長くなった毛をハサミで切って整えてあげると、「変なの」と一言呟いて、頭をブルブルふっていた。


ご飯を作ってあげると、「ゆいこさんのごはんが一番おいしい」とニコニコしながら食べていた。

 

 

 

わたしが彼に、何かをしてあげるばかりで、彼が男らしくリードしてくれたり、気の利いたことをしてくれることは、ほとんどなかった。

 

 

だから、たまにイライラして、「ちゃんとしてよ」って怒ったりした。

 

 

彼は「ごめんね」といって、笑顔でふにゃふにゃしているだけだった。

 

 

だけど、わたしが酔いつぶれると、文句ひとつ言わずに迎えにきて、連れて帰ってくれた。

 

 

 


初恋の相手は、同じ中学の陸上部の部長で、毎年必ず学級委員長もやるような人だった。

わたしは初恋の相手のような、クレバーな犬みたいなタイプが好きだったから、野良猫に恋に落ちるとは思わなかった。

 

案の定、ドキドキする瞬間はあまりなかった。

 

 

けれど、グルグルとのどを鳴らしている時の、猫の目じりのような、なんとも言えない幸福感を、わたしはいつも感じていた。

 

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数ヶ月経ったある日、彼は家からいなくなってしまった。

 

 

「寂しくなったら、僕が置いていった本を読んでね」と、言い残して。

 

 

もう帰ってこないのだと、何となくわかった。

 

 

 

 

 

 


彼は、世界一周している旅人だった。

 

彼は、カメラマンで、よく野良猫の写真を撮っていた。

 

そして、彼もまた、野良猫みたいな人だった。

 

 

 

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それからというものの、道端で野良猫を会うと、どうしても立ち止まってしまう。

 

 

 

以前に、「猫は人間のことを、大きな猫だと思っている」という話を聞いたことがあった。

 

 

だから野良猫に会うと、たくさん遊んでもらえるように、わたしも猫の気持ちになってみるのだ。

 

しゃがんで、小さくなる。

3mくらいまでそっと近寄る。

目線を合わせて、しばらく待つ。

そうすると、不思議そうな目で、チラチラこちらを見てくる。

更に待っていると、(猫によっては)近寄ってくる。

 

 

 

ごくたまに、私が猫の気持ちになる前に、向こうからひょこっと近づいてきて、コロンと小さなお腹を見せてくる子がいる。

 

 

「お前、帰ってきていたのかぁ」

懐かしくなっては、可笑しくて一人で笑ってしまう。

 

 

それはもう、いつの日か、わたしの家の前でミャーミャー鳴いていた彼にしか見えないのだ。

 

 

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猫は、人のために、何をしてくれるわけでもない。

それどころか、遊ぶのに飽きると、ぷいっとどこかへ行ってしまう。

何とも身勝手な生き物だ。

 

 

それなのに、猫と遊んでいると、日々の悩みも、未来への不安な気持ちも、どこかへいってしまう。

 

 

いま目の前にいる、このフカフカした生き物に触れるだけで、ただ無条件に、幸せを感じるのだ。

 

まるで、わたしも猫になったみたいに。

 

 

 

猫と遊ぶ時間は、この世で一番、ぜいたくな時間だと思う。

 

 

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そうだ、猫を飼おう。

 

ちょっと気まぐれで、とびっきり甘えん坊な子がいいな。

 

それから、一緒に旅に出られる子がいい。

 

 

 

 

yuico *

 

(天狼院ライティング・ゼミ 課題記事より 2017.4.24)